個品危険物の安全な海上輸送について② 危険物の識別①

海上運送中の貨物火災事故の原因の多くは、故意又は過失にかかわらず、危険物として運送すべきものの申告を怠る“無申告”又は危険物の危険性を誤って申告する“誤申告”であると言われ、それらをなくすことは船舶の安全な航行に非常に重要です。第二回目の今回は、分類、判定基準、複数の危険性を有する危険物、海洋汚染物質についてご紹介します。
 

1. 分類

危険物は、その危険性に応じてまずクラス 1 から 9 の9つのクラスに大別され、さらに、その内のいくつかは、危険性を細区分した項目に分けら れます。また、物品危険物を除く、クラス 3、4.1(自己反応性物質を除く)、 4.2、4.3、5.1、6.1、8 及び 9 の危険物には、危険性の度合いに応じて I(危 険性大)、II(危険性中)又は III(危険性小)の容器等級(Packing Group、 以下「PG」)が割り当てられます。

同一国連番号であったとしても、PG が違えば、容器包装や積載方法等 の運送要件が異なります。

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【表 2-1】危険物のクラス

 

2. 判定基準

クラス及び PG を決定する判定基準は、危険物輸送に関する国連勧告別冊「試験方法及び判定基準」、「IMDG コー ド Part 2 :Classification」及び「危告示 別表第 1 備考 2」 に規定されています。PGの判定基準の一例として引火性液体類の判定基準の一部抜粋を表.2-2 に示しています。 引火性液体類の PG の判定には、主に「初留点」及び「引火点」の情報が必要です。

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【表 2-2】引火性液体類の容器等級判定基準(一部抜粋)

 

3. 複数の危険性を有する危険物

危険物の中には、複数の危険性を有するものがあります。分類の基となる危険性を「主危険性」、それ以外の危険性を 「副次危険性」と呼びます。例えば、引火性と毒性を有するもの、引火性と毒性に加えて腐食性をも有するもの等があ ります。複数の危険性が確認された場合、どの危険性を主危険性とするかにより、割り当てる国連番号が異なります。 主危険性と副次危険性の決定方法は、「危告示 別表第 1 備考 3」等に規定されています。

4.海洋汚染物質

危険物の中には危険物であると同時に海洋環境を汚染する可能性を有することから、海洋汚染 物質に該当するものがあります。そのようなものは、図.2-1 の「海洋汚染物質マーク」を輸送物に 表示する等、追加の運送要件が適用されます。 

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【図 2-1】 海洋汚染物質マーク