個品危険物の安全な海上輸送について①

昨今、大型コンテナ船の火災事故が発生していますが、その多くは、危険物として運送すべきものの申告を怠ったことに 端を発しています。そこで危険物の識別や申告・輸送手続きについて、日本海事検定協会のご協力のもとにお伝えします。

1. はじめに

海上運送中の貨物火災事故の原因の多くは、故意又は過失にかかわらず、 危険物として運送すべきものの申告を怠る“無申告”又は危険物の危険性を誤って申告する“誤申告”であると言われています。コンテナ船に積まれたコンテナ貨物で火災が発生した場合、その貨物だけでなく、周辺に積まれていたコンテナも火災に巻き込まれることとなり、“無申告”または“誤申告”をなくすことは船舶の安全な航行に非常に重要です。

今回「安全な個品危険物の海上運送」と題し、全 9 回にわたって危険物の「識別」や「容器包装」等の運送要件についてご紹介します(表.1-1)。

海上運送における安全を確保するために、危険物海上運送規則に則った正 確な申告に繋がる一助になればと思います。

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(表 1-1)「個品危険物の安全な海上輸送」発信予定 第一回目の今回は、国内運送規則、危険物の個品運送の流れについてご紹介します。

2. 国内運送規則

危険物の海上運送の形態は、危険物をドラム缶、箱等の容器に収納して運送する「個品運送」と大量の危険物を船倉内又はタンクに直接積む「ばら積み運送」とがあります。 個品危険物の海上運送における国際規則は、国連専門機関である国際海事機関(IMO)が策定する IMDG コード(国際海上危険物規程)であり、日本は IMDG コードの要件を「危険物船舶運送及び 貯蔵規則(危規則)」及び「船舶による危険物の運送基準等を定める告示(危告示)」等の関連告示に取り入れ国内法としています。

3. 危険物の個品運送の流れ国内運送規則

危険物の個品運送は、輸送物の危険性を評価・判定する「識別」から始まります。運送に際し、運送規則が定める判定基準に従い、危険性の種類、危険性の大きさ、物理的性状(気体、液体又は固体)等を評価し、危険物として運送すべきものであるか否かを判定します。運送規則には、危険物の名称(正式品名)と共に、危険性の種類、危険性の大きさ、適用される容器要件等を一覧表にまとめた危険物リストがあります。現行の危険物リストには、約 2,800 の危険物が掲載されており、それぞれの危険物に 4 桁の識別番号(国連番号)が割り当てられ、この国連番号によって簡単に危険物を特定することができる ようになっています。

危険性の評価結果を基に運送しようとする危険物が危険物リストに掲載されたどの危険物に該当するのかを判断する(国連番号を選定する)ことが必要であり、その責任は、原則、荷送人に課されています。国連番号毎に容器包装、標札、隔離、 積載等の運送要件が規定されており、「識別」を的確に行うことにより、輸送物が適切に取り扱われることとなります。