個品危険物の安全な海上輸送について③ 危険物の識別②

海上運送中の貨物火災事故の原因の多くは、故意又は過失にかかわらず、危険物として運送すべきものの申告を怠る“無申告”又は危険物の危険性を誤って申告する“誤申告”であると言われ、それらをなくすことは船舶の安全な航行に非常に重要です。
第 3 回目の今回は、危険物リスト、国連番号の選定についてご紹介します。

1. 危険物リスト

荷送人は、分類によって判定された危険性のクラス(等級)、危険性の度合い、物理的性状等を基に、危険物リ ストに掲載された約 2,800 の国連番号の中から、危険性状を最も的確に表しているものを選定しなければなりま せん。(国連番号毎に、危険性、容器及び包装、積載方法、隔離等、運送要件が規定されたものを「エントリー」 と呼びます。)

一例として、UN1230メタノールは、接着剤、塗料、農薬、医薬品等の原料又は中間素材として多種多様の用途があり、最近では自動車、船舶等の燃料としても注目されている化学物質です。引火性(等級 3、引火点:約 12°C)に加えて毒性(等級 6.1)を有するものとして分類されています。なお、エントリー中の各運送要件は記号(容器及び包装の「P001」等)で示されており、各記号 の意義は別途規定されています。

 

2. 国連番号の選定

国連番号は、次の1~3のタイプがあります。

1 固有名詞の国連番号

 

(例 UN1789 塩酸(HYDROCHLORIC ACID)、UN1294 トルエン(TOLUENE)

2 包括品名の国連番号

(例 UN1133 接着剤(ADHESIVES)、UN1266 香料製品類(PERFUMERY PRODUCTS)

3 英語品名に N.O.S.※が付く国連番号

(例 UN1987 アルコール類(ALCOHOLS, N.O.S.)、UN1993 その他の引火性液体類 (FLAMMABLE LIQUID, N.O.S.))

 

荷送人は、国連番号を選定する際、まず、1のタイプの中に該当するものがあるかを確認し、該当するものがあればそれを選定します。1のタイプの中に該当するものがない場合は、続いて2のタイプの中に該当する国連番号があるかを確認し、該当するものがあればそれを選定します。1及び2のタイプの中に該当する国連番号がない場合は、最後に3のタイプの中から適切な国連番号を選定します。1、2及び3のいずれのタイプの中にも適切な国連番号が存在しない場合には、原則として、その危険物を輸送することはできません。

(※N.O.S.とは not otherwise specified の略語で、他に該当する適当な品名が無いものという意味です。)

なお、国連番号の選定には、正式品名がアルファベット順又はアイウエオ順で掲載された規則書の索引等を活用することができます。

1 固有名詞の 国連番号 

2 包括品名の 国連番号

3 英語品名に N.O.S.が付く