Incoterms 2020の 発効とその変更点 1〜4

1. はじめに

2019年9月10日、国際商業会議所(International Chamber of Commerce)は国際的な貿易 規則として全世界で利用されているIncoterms(インコタームズ)を10年振りに改訂すると発表し、 2020年1月1日に最新版のIncoterms 2020が発効しました。本稿では、旧版のIncoterms 2010からの主要な変更点と最新版のIncoterms 2020を使用する際の注意点を紹介します。

2. Incotermsの変遷

Incotermsは貿易における取引条件を定めた国際規則で、主に(1)運送・保険の手配や通関手続と その費用を売主・買主のどちらが負担するのか、(2)物品の危険負担がどの地点で売主から買主に移転 するのかについて規定しているもので、FOB(Free on board : 本船渡し)、CFR(Cost and Freight : 運賃込み)、CIF(Cost, Insurance and Freight : 運賃保険料込み)のようにアルファベット三文字で 表記されます。 Incotermsは1936年に国際商業会議所によって制定されて以来、国際貿易の発展に伴い10~20年 間隔で不定期に改訂されていましたが、1980年以降はコンテナリゼーションや電子取引の普及などに よる輸送形態と貿易実務の急速な変化に応じて10年ごとに定期的に見直されてきました。 直近では、2010年に発効したIncoterms 2010において、規則の数が13個から11個に集約された 他、規則が輸送形態に応じて1あらゆる輸送形態に適した規則(コンテナ輸送や航空輸送などの輸送形態 に広く適用)、2海上および内水輸送のための規則(主に在来船輸送に適用)の2種類に大分され、また FOB、CFR、CIFの各条件において危険負担の分岐点が、物品が「本船手すり(Ship’s Rail)を超えたとき」 から「本船の船上(On board)に置かれたとき」に変更されるなど多くの重要な改訂が行われました。