物流は改善傾向も、日系企業9割が収益マイナス予想、 上海日本商工クラブが実態把握

上海日本商工クラブ(注)は6月2日、 「上海市封鎖管理による事業への影響等に 関する実態把握(第3回)」の結果を公表 した。調査は5月27日~31日に実施し、上 海日本商工クラブの各業種別部会正副部会 長、正副分科会長、各地域連絡会正副会長、 事業環境委員会メンバー会社、製造業関連 企業のうち129社から回答を得た。今回の 実態把握は、企業の操業再開に必要なホワ イトリストおよび申請許可制度が必要な状 況下で実施したもの。6月1日以降、申請許 可制度は廃止となっている。

今回の実態把握によると、上海に工場を 持つ製造業企業のうち、操業許可を取得し た企業は89%にのぼった。工場への制限・ 稼働状況において「3割以下の生産」と 「半分程度の生産」と回答した企業は約6 割、「7割以上の生産」と回答した企業も2 割あった一方、14%が「全く稼働していな い」としている。操業率回復にむけた課題 (複数回答)では、「物流の回復」 (73%)、「従業員の宿泊設備確保」 (63%)、「従業員の確保」(55%)、 「サプライヤーの操業回復」(52%)が上 位を占めた。前回結果と同様、封鎖管理期 間中の生産遅れの挽回方法としては、(自 社上海工場の)操業回復を通じて挽回する と回答する企業がほとんどだった。

<中国国内、国際物流とも必要量の半分以 下しか手配できていない企業が過半> その他、上海市外に所在する自社工場について、「計画通り生産」と回答した企業 が57%にのぼり、半分程度以上の生産とす る回答を含めると86%に達した。操業率回復に向けては、「物流の回復」(57%)、 「納品先の操業回復」(29%)、「サプラ イヤーの操業回復」(29%)が課題となっ ている。

上海市外や上海市内の中国国内物流につ いては、7割以上の企業が必要量の半分以下しか手配できていない。そのうち、「全 く手配できない」と回答する企業もそれぞ れ1割を超えた。他方、前回の実態把握で は、「全く手配できない」とする企業は、 上海市外で35%、上海市内は56%だった ことから、状況は改善しつつある。

国際物流の手配は、必要量の半分以下し か手配できていないと回答した企業は約6 割、うち、全く手配できないと回答した企 業は14%にのぼった。

上海の代替として利用している他地域の 港(空港)は順に、寧波、広州、天津、青 島、大連、深センなど広範囲にわたった。

物流全般では、高速道路の検問が減少し、 通行証の申請などがスムーズになったこと など改善はみられるが、物流費の高騰や税 関の混乱などを指摘する声もあり、正常化 にはまだ一定の時間を要するもようだ。

そのほか、駐在員の臨時帰国・避難を実 施済み・予定・検討すると回答した企業は 16%で、帯同家族は22%となった。今後 の駐在員数への影響については、「変更な し(73%)」が「減らす(6%)」を大き く上回った。なお、勤務体制については、 全面在宅勤務(64%)が多かったものの、 泊まり込みの対応(44%)を実施する企業 もあった。特に、上海市内に工場を持つ企 業のうち、泊まり込みの従業員がいる企業 は86%に達した。

今後の見通しについては、封鎖前と同様 の生産、業務が可能と思われる時期として 「6月中」(33%)、「7~8月」 (50%)と回答した企業が8割を占めた。 2022年の収益への影響については、9割近 くがマイナスとの見通しを示しており、税 制優遇策や家賃減免などを求める声も多い。 中国への投資姿勢への影響については、 「変更なし」(45%)が約半数を占めたが、 「まだ分からない」と回答した企業も39%にのぼった。

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