台風シーズンに向けた貨物事故防止策のご案内

株式会社ウェザーニューズが発表した予測によると、今年は8月から台風発生域の対流活動が活発 になり、シーズンを通じて26個前後(平年並み)の台風が発生する見込みです。台風の発生位置・ 進路は平年よりも西寄りで、特に9月以降は偏西風の南下に伴い、本州へ接近・上陸する危険性が高 まると予想されています。本稿では、台風シーズンの本格化に向けた対策をご案内します。

1.タイムライン防災とは

昨年の台風シーズンには、大規模停電(台風15号)、河川氾濫(台風19号)等の大きな被害が 相次いで発生しました。台風の接近に合わせた計画的な交通機関の運休、店舗・事業所等施設の閉店 も行われるようになり、災害への備えに対する社会的な関心が高まりました。

災害発生時刻を「ゼロ・アワー」と定め、そこから時間を遡って、各対策の実施タイミングを整理 し、必要なリードタイムを確保する手法を「タイムライン防災」と呼びます。防災対策を確実に実行 するための整備において、企業や自治体にて重要視されている手法です。台風の場合、上陸する約 120時間前(5日前)には予測が可能ですので、被害を最小限にする対策として、予め「いつ」「誰 が」「何をするか」を明確にした行動計画(=タイムライン)を策定しておくことが有効です。

 
2.貨物事故の事前防止策

(1)平時:水害リスクと物流実態の把握 国土交通省や自治体のハザードマップから水害リスクを確認し、必要に応じて物流ルートや保管場

所の変更を検討します。物流実態を把握し、貨物保管場所のリスクに対策を講じることは、台風に限 らず、自然災害に備えるために重要です。いざという時に災害情報にアクセスできるよう、平時から 活用方法を把握しておきましょう。以下のサイトをご案内します。

・気象庁 防災情報 :https://www.jma.go.jp/jp/warn/
・国土交通省 ハザードマップポータルサイト:https://disaportal.gsi.go.jp/
・国土交通省 浸水ナビ(地点別) :https://suiboumap.gsi.go.jp/ShinsuiMap/Map/

当社は株式会社ウェザーニューズと提携して、国内貨物総合保険フルラインまたは新・物流包括保 険サポートワン等をご契約のお客さま向けに「気象情報アラートサービス」を提供しています。専用 サイトに登録いただいた最大5か所の観測地点において、予想降水量・風速等が一定条件を超えた場 合に、E メールによるアラート(注意喚起情報)

を配信いたします。事業に影響を与える気象変化 をモニタリングすることで、タイムライン防災や 貨物事故防止策の実施にお役立てください。

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(2)台風シーズンが本格化する前:貨物の集積・滞留回避 港頭地区に貨物が長期間滞留・集積することを回避するため、輸出貨物のコンテナヤードや港頭倉

庫への出庫量を調整しておきます。輸入貨物の場合は、港頭地区からの早期引取りを実施します。さ らに、例年の台風進路にあたる地域の倉庫や、浸水リスクの高い場所に貨物が集積していないか確認 し、台風接近時に損害規模が大きくならないよう、保管場所の分散や、輸送スケジュールの変更を行 います。運送事業者と貨物の避難方法について、予め協議しておきます。

(3)台風接近・上陸5日~1日前:防災対策が行われていることの確認 屋外に保管している貨物は、このタイミングで屋内に避難させます。運送事業者と連携し、以下を

中心に防災対策が実施されていることを確認します。

1屋内保管貨物のチェックポイント □床の高さは高潮等にも十分耐えられるか。扉は水密構造か。 □貨物は安定したパレットやラック等に置かれており、床に直置きされていないか。 □防潮板は耐波性のある鋼製の横引式か。 □採光窓は風雨・飛来物に耐えられるものか。 □上屋・倉庫周辺の排水溝に落ち葉等の堆積物が溜まっていないか。 □防潮扉、側壁、屋根、採光窓を点検・補修する。 □シート・カバー、扉補強用土嚢を事前に確保する。 □湿気に弱い貨物は上段あるいは2階以上に蔵置する。 □屋内貨物であってもシート掛けする(湿気によるダメージを防止)。 □カートン・ボックスの積重ねは極力避ける。 □入口・窓際・排水溝付近を避け、浸水リスクの低い場所へ移動する。

2コンテナに積載された状態で仮保管される貨物のチェックポイント □コンテナに損傷はないか。特に天井部・側壁部等に穴や亀裂がないか。 □濡損・破損を受けやすい貨物については密閉式ドライコンテナを使用する。 □岸壁から極力離れたところに置く。 □極力2段積みとし、扉は風上あるいは波の来る方向を避ける。 □コンテナを相互に固定する。 □空コンテナを放置せず、貨物入りコンテナと同様に相互に固定する。 □冷凍冷蔵コンテナは応急電源を用意する。

3.貨物が被災したときは

(1)速やかに取扱代理店または当社に以下をご連絡ください。 ・保険証券番号(外航、内航、運送、運賠、有価証券・貨紙幣類等、保険種類に関する情報) ・被災場所 (輸送中、積込中、荷卸中、保管中等の情報もご連絡ください)
・貨物情報
・見込損害額
・損害写真 ・外航貨物の場合は下記もご提出いただき、海上輸送ではコンテナ番号もお知らせください。

船積書類:Invoice、Packing List、船荷証券または Air Weybill(未発行の場合は Booking 書類)

(2)損害が高額になる場合は、立会い検査(一般社団法人日本海事検定協会や一般財団法人新日本 検定協会等の検査機関による検査)により、損害の程度や損害額を確認させていただく場合がありま す。なお、罹災現場の混乱により、検査の依頼から実際の立会いまでには数日間を要する可能性があ りますことご了承ください。

<参考文献一覧>

株式会社ウェザーニューズ発表 台風傾向 2020 :https://weathernews.jp/s/topics/202006/090085/ 国土交通省 HP タイムライン防災 :https://www.mlit.go.jp/river/bousai/timeline/